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さて、いきなり質問です。
形容詞とは何でしょう?
形容詞とは、名詞の状態や性質を説明する機能を持つ語を集めたグループになります。
ちなみに、名詞は物の名前を指し示す語が所属するグループです。
形容詞には例えば、「美しい」や「古い」等があります。
名詞には例えば、「花」や「本」等があります。
形容詞は、名詞の状態や性質を説明する機能を持ちますが、形容詞は一体どのようにして名詞を説明するのでしょうか。
実は、形容詞が名詞を説明する方法は2通りあります。
形容詞の限定用法(カテゴリーを限定する用法)
形容詞が名詞を説明する方法の1つは『名詞に直接つけて名詞を説明する』という方法です。
例えば、「花(flower)」に「美しい(beautiful)」を直接付けて、「美しい花(beautiful flower)」とすれば、「花」が「美しい」という状態や性質であることを説明することができます。
また、「本(book)」に「古い(old)」を直接付けて、「古い本(old book)」とすれば、「本」が「古い」という状態や性質であることを説明することができます。
さて、このように『名詞に直接つけて名詞を説明する』という形容詞の使い方は文法用語で『限定用法』と呼ばれます。
なぜ、『限定用法』と呼ぶかと言うと、例えば先ほどの「美しい花」の場合、「花」が「美しい」というカテゴリーに属している、つまり「美しい」というカテゴリーに限定された「花」を示すからです。『限定用法』をより正確に言うのであれば『カテゴリーを限定する用法』となります。
形容詞の叙述用法(カテゴリーを決定する用法)
形容詞が名詞を説明する、もう1つの方法は『動詞の力を借りて名詞を説明する』という方法です。
例えば、「花(flowers)」と「美しい(beautiful)」を動詞の「are(~である)」で結ぶと、「花は美しい(Flowers are beautiful.)」と文を作ることができ、その文によって「花」が「美しい」という状態や性質であることを説明することができます。
また、「本(the book)」と「古い(old)」を動詞の「is(~である)」で結ぶと、「その本は古い(The book is old.)」と文を作ることができ、その文によって「本」が「古い」という状態や性質であることを説明することができます。
さて、このように『動詞の力を借りて名詞を説明する』という形容詞の使い方は文法用語で『叙述用法』と呼ばれます。
「叙述」を辞書で調べると、「物事を順を追って述べること」とあります。つまり、順番として先に名詞を置いて、その後に動詞と形容詞を並べることで、名詞についての状態や性質を述べることから『叙述用法』と呼ばれます。
ところで、この「叙述」という語は日常的に普段あまり使わない語であり、『叙述用法』という名前が難しくて用法としてのイメージが湧かないと思う人もいるかと思いますので、別の名前を考えたいと思います。
先ほど、『限定用法』のところで、『限定用法』は『カテゴリーを限定する用法』だと述べました。これと同じような呼び方を与えるのであれば、『叙述用法』は『カテゴリーを決定する用法』だといえます。
例えば、『叙述用法』で「その本は古い」という場合、「その本(のカテゴリー)は古い(である)」と解釈すると、『叙述用法』が『カテゴリーを決定する用法』であることが納得いただけるかと思います。
したがって、形容詞が名詞を説明する『限定用法』と『叙述用法』の2通りの方法は、分かりやすく言うと、『カテゴリーを限定する用法』と『カテゴリーを決定する用法』になります。
ちなみに、『叙述用法』として使われる形容詞のことを「補語」と呼びます。「補語」とは、文の中で動詞の力を借りて名詞を説明する役割を持つ語のことをいいます。
『限定用法』と『叙述用法』の違い
ここで『限定用法』と『叙述用法』の違いについて少し整理をしたいと思います。
名詞を説明する方法について比較をすると次のような違いがあります。
『限定用法』では、形容詞が単独で名詞を説明する。
『叙述用法』では、形容詞が動詞の力を借りて名詞を説明する。
また、構造とカテゴリーの当てはめ方について比較をすると次のような違いがあります。
『限定用法』は、名詞に直接形容詞をつけ、形容詞によってカテゴリーの限定された名詞を作る。
『叙述用法』は、名詞の後に動詞と形容詞を並べ、名詞のカテゴリーを決定する文を作る。
『限定用法』と『叙述用法』には以上のような違いがあります。
限定用法と叙述用法で意味の異なる形容詞
形容詞は、基本的に『限定用法』と『叙述用法』のどちらの用法で使用しても同じ意味になることがほとんどですが、中には『限定用法』と『叙述用法』で異なる意味になる形容詞もいくつか存在します。
『限定用法』と『叙述用法』で異なる意味になる形容詞には次のようなものがあります。
present([限]現在の/[叙]出席して) / ill([限]悪い/[叙]病気で) / certain([限]ある/[叙]確かである) / fond([限]大好きで/[叙]やさしい) / ready([限]即座の/[叙]用意ができて) / sorry([限]低劣な/[叙]気の毒で) / right([限]右の・正しい/[叙]正しい)
例文で確認してみましょう。
<〔形〕present の場合>
【限定】She is his present wife. (彼女が彼の現在の妻である。)
【叙述】She is present at the party. (彼女はパーティーに出席している。)
<〔形〕ready の場合>
【限定】He always makes a ready answer. (彼はいつも即答する。)
【叙述】He is ready to work. (彼は働く用意ができている。)
以上で、『限定用法』と『叙述用法』で異なる意味になる形容詞があることが理解いただけたかと思います。
さて、次は『限定用法』として使われる形容詞の語順について説明します。
限定用法の形容詞の語順
『限定用法』では、前に説明したように、形容詞を説明したい名詞に直接つけます。
名詞に直接形容詞をつける場合の形容詞の位置は、原則的に名詞の前になります。
形容詞を複数重ねる場合の順序
形容詞を複数重ねる場合の順序については、大体次のようになります。
⑴ John's new grey steel desk (ジョンの新しい灰色の鉄製の机)
⑵ these first ripe small apples (これらの最初の熟した小さいリンゴ)
⑶ the last two old red brick houses (その最後の2つの赤いレンガの家)
⑷ a pretty young French girl (かわいくて若いフランスの女の子)
先頭から順に「限定詞」「序数」「数量」「性状」「大小」「新旧」「色」「材料・所属」という順序になります。
さて、形容詞の基本の位置は名詞の前ですが、限られた条件のみ名詞の後ろに形容詞を置く場合があります。
名詞の後ろに形容詞を置く場合
名詞の後ろに形容詞を置くケースについて、いくつか説明します。
1. 形容詞が他の語と結合して語群をつくる時
形容詞が他の語と結合して語群をつくる際、形容詞は名詞の後に置きます。
例文で確認しましょう。
⑴ She had a large basket full of flowers. (彼女は花がいっぱい入った大きなかごを持っていた。)
⑵ France produces wine and cheese famous all over the world. (フランスは世界的に有名なワインとチーズを生産している。)
例文⑴では、名詞「basket」を「full of flowers」という形容詞の語群が後ろから修飾(説明)しています。
例文⑵では、名詞「wine and cheese」を「famous all over the world」という形容詞の語群が後ろから修飾(説明)しています。
2. 特定の不定代名詞を修飾する時
形容詞が「something」「anything」「someone」「anyone」「somebody」「anybody」といった不定代名詞を修飾する際、形容詞は名詞の後に置きます。
例文で確認しましょう。
⑴ We need someone new on the team. (我々はチームに新たな人が必要だ。)
⑵ Is there anything interesting in today's paper. (今日の新聞には何か面白いことがありますか?)
⑶ His cousin is somebody quite high up in the navy. (彼のいとこは海軍でかなり高い地位についている。)
例文⑴では、不定代名詞「someone」の後に形容詞「new」を置き、後ろから不定代名詞を修飾(説明)しています。
例文⑵では、不定代名詞「anything」の後に形容詞「interesting」を置き、後ろから不定代名詞を修飾(説明)しています。
例文⑴では、不定代名詞「somebody」の後に形容詞の語群「quite high up」を置き、後ろから不定代名詞を修飾(説明)しています。
以上、形容詞を名詞の後ろに置く場合について代表的な例を説明しました。
それでは、最後に今回学んだことをまとめたいと思います。
まとめ
今回は形容詞の使い方について学びました。
形容詞とは何かについて学びました。
- 名詞の状態や性質を説明する機能を持つ語を集めたグループ
『限定用法』と『叙述用法』の違いについて学びました。
『限定用法(カテゴリーを限定する用法)』は、
- 形容詞単独で名詞を説明する。
- 名詞に直接形容詞をつけ、形容詞によってカテゴリーの限定された名詞を作る。
『叙述用法(カテゴリーを決定する用法)』は、
- 形容詞が動詞の力を借りて名詞を説明する。
- 名詞の後に動詞と形容詞を並べ、名詞のカテゴリーを決定する文を作る。
<注>『限定用法』と『叙述用法』で意味の異なる形容詞が存在する。
『限定用法』の形容詞の語順について学びました。
・形容詞は原則的に名詞の前に置く。
・形容詞を複数重ねる場合の順序は、先頭から順に「限定詞」「序数」「数量」「性状」「大小」「新旧」「色」「材料・所属」である。
・例外的に形容詞を名詞の後ろに置くこともある。