前置詞の〔of〕は日本語の助詞の「の」で訳すと考えている人が多いですが、「の」で和訳した場合に収まりがあまり良くない場合があります。

助詞「の」を使って上手く和訳できる場合が次の例文です。

例文 1

A friend of my sister ate it. (私の姉友人のひとりがそれを食べた。)

次の例文は、助詞「の」では収まりが悪い場合です。

例文 2

He has no love of nature. (彼は自然愛を持たない。)

「自然の愛」とはどういうことでしょう。「自然が持っている愛」でしょうか?自然は無生物なので、愛という感情を持たないはずです。「自然の愛」と訳すのはあまり良い訳ではないように思われます。

助詞の「の」だけに頼らない、収まりのよい和訳をするためにはどうすればよいでしょう。

さて、本題に入る前に、〔名詞 + of + 名詞〕の文法説明を行います。

〔名詞 + of + 名詞〕文法の説明

基本的に、前置詞とその直後に置かれた前置詞の目的語(=名詞)はセットになって句という語のかたまりを作ります。

そして、この語のかたまり(=句)は形容詞の働きもしくは副詞の働きのどちらか一方の働きを行います。

どちらになるかは状況次第で様々です。

さて、ここで、形容詞、副詞のそれぞれの働きをおさらいしましょう。

形容詞の働きは、「名詞を修飾(説明)する」です。

副詞の働きは、名詞以外の修飾(説明)で、具体的には「動詞を修飾(説明)する」、「形容詞を修飾(説明)する」「自分以外の副詞を修飾(説明)する」「文を修飾(説明)する」です。

〔名詞 + of + 名詞〕という形の場合は、後ろ側の〔名詞〕が前置詞〔of〕の目的語になり、〔of + 名詞〕で句を作り、その句は形容詞の働きをする形容詞句となり、句の前の〔名詞〕を修飾(説明)します。つまり、前側の〔名詞〕に対し、形容詞句部分の和訳「〔名詞(後ろ側)〕の~」という説明が行われます。

簡単な構造なので、理解するのは容易ですね。

さて、本題に戻ります。

助詞の「の」だけに頼らない、収まりのよい和訳をするためにはどうすればよいでしょう。

ポイントは、前側の名詞です。前側の名詞に注目します。

カテゴリーを定める〔of〕

前側の名詞が〔人や物や場所を表す名詞〕の場合は助詞の「の」を使った訳が上手くいく場合が多いです。

例文 3

⑴ a man of middle age (中年ある男性)

⑵ Turn back the corner of a page, please. (ページ隅を折ってください。)

〔of〕を「の」と訳して上手くいく場合は、〔of〕の前の名詞がどのようなカテゴリーに属するかを後ろの名詞が説明しています。このような働きをする〔of〕は「カテゴリーを定める〔of〕」という名前を付けて覚えることにしましょう。

他動詞と目的語を結ぶ〔of〕

もし、前側の名詞が〔人間や人間以外の行為や動作が名詞化したもの(=少し難しく言うと、物質的ではなく観念的なもの)〕である場合は、助詞の「の」をつかうのではなく、前側の名詞を動詞のように訳し、そして、後ろ側の名詞をその動詞の目的語のようにして訳すと、収まりのよい和訳になります。つまり、「~を…すること」と訳すことになります。それでは、確認してみましょう。

例文 4

⑴ He has no love of nature. (彼は自然愛を持たない。⇒彼は自然を愛する心(=こと)を持たない。)

前側の〔love〕という名詞を、「愛する」と動詞化して訳し、後ろ側の名詞〔nature〕を「愛する」という動詞の目的語として扱います。すると、「自然を愛する」という和訳になります。そして、これをさらに名詞化して「自然を愛すること」とすれば完成です。この例文では「愛することを持たない」だと少し変なので、さらに「こと」を「心」に変えました。このように「こと」は状況に応じて、臨機応変に具体的な事柄へ置き換えると整った和訳になります。

他の例文でも確認してみましょう。

例文 5

⑴ It was so cold that we lost the use of our hands. (非常に寒かったので、手の使用が損なわれた。⇒非常に寒かったので、手を使うことが損なわれた。)

⑵ Loss of health is more serious than loss of money. (健康の損失はお金の損失よりも深刻である。⇒健康を損なうことお金を失うことよりも深刻である。)

⑶ In most countries, the employment of young children is against the law. (たいていの国では、児童の雇用は法律違反になる。⇒たいていの国では、児童を雇うと法律違反になる。)

「の」を使っても和訳に違和感のないものもありますが、大切なことは〔of〕の前が動詞で〔of〕の後が動詞の目的語になっているという関係を掴むことです。単調に和訳をするのではなく、このような意識を持つことがイキイキとした英文の理解に繋がります。さて、このような働きをする〔of〕は「他動詞と目的語を結ぶ〔of〕」という名前を付けて覚えることにしましょう。

続いて、この〔名詞 + of + 名詞〕は〔所有格 + 名詞 + of + 名詞〕になることがあります。この場合の和訳について考えましょう。

先ほど、前側の名詞が〔人間や人間以外の行為や動作が名詞化したもの〕である〔名詞 + of + 名詞〕は前の名詞が動詞で後ろの名詞がその目的語となり、「~を…すること」と訳すと説明しました。前の名詞の前に〔所有格〕が付いた場合、その所有格はその動詞の主語になります。つまり、「―が(は)~を…すること」と訳します。例文で確認してみましょう。

例文 6

⑴ This poet is widely known for his deep love of nature. (この詩人は彼の深い自然の愛で広く知られています。⇒この詩人は自然を深く愛することで広く知られています。)

⑵ I insisted on his payment of the bill. (私は彼の勘定の支払いを主張した。⇒私は彼が勘定を支払うべきだと主張した。)

⑶ Her knowledge of German gave her an advantage over the other girls. (彼女のドイツ語の知識は、彼女を他の女の子よりも有利にした。⇒彼女はドイツ語を知っていたので、他の女の子よりも有利だった。)

これらの例文で、〔所有格 + 名詞 + of + 名詞〕の収まりの良い和訳の方法が確認できたかと思います。

自動詞と主語を結ぶ〔of〕

さて、実は、これまで扱ってきた〔名詞 + of + 名詞〕は、〔of〕の前の名詞がすべて他動詞が名詞化したものを例としていました。そのため、後ろの名詞を目的語とすることができました。それでは、目的語を必要としない自動詞が名詞化したものが〔of〕の前の名詞になった場合、どうすればよいのか確認してみましょう。

例文 7

arrive【自】到着する

We had to change our schedule because of the late arrival of the train. (電車の遅い到着により、我々は日程を変更しなければならなかった。⇒電車が遅れて到着したので、我々は日程を変更しなければならなかった。)

例文から伺えるように、〔of〕の前の名詞が自動詞が名詞化した場合の〔名詞 + of + 名詞〕は、〔of〕の後の名詞が自動詞の主語になります。

他の例文も確認しましょう。

例文 8

develop【自】発展する(〔【他】~を発展させる〕の用法も有る)

The development of his small shop into a large business took many years. (彼の小さな店の大きな商売への発展は長い年月を要した。⇒彼の小さな店が大きな商売へ発展するには長い年月を要した。)

「の」を使っても和訳に違和感のないと感じるかもしれませんが、〔of〕の前が自動詞で〔of〕の後が自動詞の主語になっているという関係を掴むことが大事です。語と語の正しい関係を意識した和訳ができるように練習しましょう。さて、このような働きをする〔of〕は「自動詞と主語を結ぶ〔of〕」という名前を付けて覚えることにしましょう。

まとめ

それでは、最後に今回の学びをまとめたいと思います。

<カテゴリーを定める〔of〕>

〔of〕の前の名詞がどのようなカテゴリーに属するかを後ろの名詞が説明する。

<他動詞と目的語を結ぶ〔of〕>

〔of〕の前の名詞が他動詞で後ろの名詞がその目的語になるという関係を持つ。

<自動詞と主語を結ぶ〔of〕>

〔of〕の前の名詞が自動詞で後ろの名詞がその主語になるという関係を持つ。

以上のように、一見おなじ〔名詞 + of + 名詞〕のかたちであっても異なる性質を持っていて、前の名詞と後ろの名詞の関係性も様々であることが理解できたかと思います。

和訳を行う際は、英単語それぞれの和訳を単純に当てはめる記憶・暗記ゲームのような和訳ではなく、主語やその動作、動作の対象の関係性がどのようであるかを正確に捉えることをまずは意識し、その作業がほぼ無意識下で行えるように練習を重ねましょう。

練習を重ね、語と語の関係性を無意識的に捉えることができた場合、〔of〕の使い方に関してネイティブスピーカー並みの感覚を得たといってもよいでしょう。

以上

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