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今回は、to不定詞(名詞用法)と動名詞の違いについて説明します。
動詞を名詞化する方法は2つあります。
一つは、動詞の原形の前に〔to〕を置いてto不定詞にする方法です。
もう一つは、動詞をing形にして動名詞にする方法です。
to不定詞と動名詞は文の中で名詞の働きをし、動詞の目的語になることができますが、動詞の目的語になった場合それぞれ異なる性質を示します。
それぞれ次のような性質を示します。
「未来的・達成指向」という特徴を持ち、未だ達成されていない未達成の事柄が達成に向かって行くような未来的な性質を示します。
「現在的・対処指向」という特徴を持ち、現在置かれている状況や状態をどう対処するか、またはどう感じるかを表わす性質を示します。
このような性質の違いから、to不定詞のみ目的語にする動詞が存在したり、動名詞のみ目的語にする動詞が存在します。また、to不定詞と動名詞の両方を目的語にするが、その表す意味がそれぞれ異なる動詞も存在します。
ここから先は、to不定詞のみ目的語にする動詞、動名詞のみ目的語にする動詞、to不定詞と動名詞の両方を目的語にするが、その表す意味がそれぞれ異なる動詞について解説を行います。
to不定詞のみ目的語にする動詞
to不定詞は、「未来的・達成指向」という特徴を持ち、未だ達成されていない未達成の事柄が達成に向かって行くような未来的な性質があります。
to不定詞のみ目的語にする動詞には次のようなものがあります。
claim(主張する) / decide(決める) / decline(断る) / demand(要求する) / desire(望む) / determine(決心する) / expect(予期する) / hope(望む) / learn(~できるようになる) / manage(何とかやる) / mean(つもりである) / offer(申し出る) / pretend(ふりをする) / promise(約束する) / refuse(拒否する) / resolve(決心する) / seek(~しようと努める) /wish(したいと思う)
これらのto不定詞のみ目的語にする動詞について、例文で確認してみましょう。
⑴ He claims to know nothing about the robbery. (彼は例の強盗事件について何も知らないと言張している。)
⑵ We have decided to go on a picnic next Sunday. (私たちは来週の日曜日ピクニックに行くことを決めた。)
⑶ I demanded to know what had happened. (私は何が起きたのか教えるように要求した。)
例文の各動詞について、「未来指向(達成に向かう)」をテーマに解説します。
例文⑴の〔claim(言い張る)〕は、主張した内容を周囲に認めさせるというゴール(達成)に向かって主張が行われていると解釈できます。
例文⑵の〔decide(決める)〕は、行動の実行(達成)に向かって意思決定が行われていると解釈できます。
例文⑶の〔demand(要求する)〕は、求めている状況や行動が達成されるように要求が行われていると解釈できます。
⑷ I desired to have good results. (良い結果を出したいと望んだ。)
⑸ I determined to succeed as an actor. (私は役者として成功してやろうと決心した。)
⑹ He expects to be sent to Europe any day now. (彼はいつでもヨーロッパに派遣されることを期待している。)
例文の各動詞について、「未来指向(達成に向かう)」をテーマに解説します。
例文⑷の〔desire(望む)〕は、望みが叶うこと(達成)に向かって気持ちが込められていると解釈できます。
例文⑸の〔determine(決心する)〕は、決心することによって、目的の達成に向かっている状態だと解釈できます。
例文⑹の〔(expect(予期する))〕は、予期したことが実現(達成)に向かうと思われていると解釈できます。
⑺ I hope to come back again. (また戻ってこれることを願います。)
⑻ He lost his leg when he was ten, but learned to overcome his handicap. (彼は10歳の時に脚を失ったが、身体障害を克服できるようになった。)
⑼ The injured man managed to walk to a phone box. (そのけが人はなんとか電話ボックスまで歩けた。)
例文の各動詞について、「未来指向(達成に向かう)」をテーマに解説します。
例文⑺の〔hope(望む)〕は、望みが叶うこと(達成)に向かって気持ちが込められていると解釈できます。
例文⑻の〔learn(~できるようになる)〕は、これまでできなかったことが達成されることであると解釈できます。
例文⑼の〔manage(なんとかやる)〕は、あれこれ手段や方法を尽くして達成させることと解釈できます。
⑽ She meant to go, but she changed her mind. (彼女は行く気でいたが、気が変わって行かないことにした。)
⑾ I offered to give him a ride to school, but he declined. (学校まで乗せてあげると言ったが彼は断った。)
⑿ He pretended to be dead. (彼は死んだふりをした。)
例文の各動詞について、「未来指向(達成に向かう)」をテーマに解説します。
例文⑽の〔mean(つもりである)〕は、実行(達成)にむかって気持ちが固まっている状態だと解釈できます。
例文⑾の〔offer(申し出る)〕は、行動の達成に向かって相手に確認をとる段階だと解釈できます。
例文⑿の〔pretend(ふりをする)〕は、見せかけることで相手にそうだと思い込ませることをゴール(達成)にしていると解釈できます。
⒀ I promise never to tell a lie. (私は決してうそをつかないと約束します。)
⒁ He refused to obey the orders. (彼は命令に従うことを拒んだ。)
⒂ I resolved to go back to school. (私は学校へ戻ろうと決心した。)
例文の各動詞について、「未来指向(達成に向かう)」をテーマに解説します。
例文⒀の〔promise(約束する)〕は、約束によって目的の達成を誓うと解釈できます。
例文⒁の〔refuse(拒否する)〕は、受け入れないという状態を達成するための行動だと解釈できます。
例文⒂の〔resolve(決心する)〕は、決心することによって、目的の達成に向かっている状態だと解釈できます。
⒃ China seeks to quadruple its income in twenty years. (中国は20年間で歳入を4倍にしようと努めている。)
⒄ He wishes to go to college. (彼は大学に進学することを希望している。)
例文の各動詞について、「未来指向(達成に向かう)」をテーマに解説します。
例文⒃の〔seek(~しようと努める)〕は、目的の達成に向かって行動が行われている段階だと解釈できます。
例文⒄の〔wish(したいと思う)〕は、希望の達成に気持ちが向いていると解釈できます。
やや強引に解釈してみましたが、to不定詞が「未来指向」であり、未だ達成されていない未達成の事柄が達成に向かって行くような未来的な性質があると感じていただけたかと思います。
動名詞のみ目的語にする動詞
動名詞は「現在的・対処指向」という特徴を持ち、現在置かれている状況や状態をどう対処するか、またはどう感じるかを表わす性質があります。
動名詞のみ目的語にする動詞には次のようなものがあります。
admit(認める) / avoid(避ける) / consider(よく考える) / deny(否定する) / enjoy(楽しむ) / escape(免れる) / finish(終える) / give up(やめる) / imagine(想像する) / mind(嫌がる) / postpone(延期する) / put off(延期する) / stop(やめる)
これらの動名詞のみ目的語にする動詞について、例文で確認してみましょう。
⑴ The company admitted breaking the law. (その会社は法を犯したことを認めた。)
⑵ I narrowly avoided dropping out of college. (私はなんとか大学を中退することを免れた。)
⑶ She had often considered moving to Seattle. (彼女はシアトルに引っ越すことをしょっちゅう考えた。)
例文の各動詞について、「現在指向(対処する)」をテーマに解説します。
例文⑴の〔admit(認める)〕は、現在置かれている状況を認める行為です。
例文⑵の〔avoid(避ける)〕は、現在置かれている状況を避けるような行為です。
例文⑶の〔consider(よく考える)〕は、現在置かれている状況を踏まえてよく考える行為です。
⑷ He denies attempting to murder his wife. (彼は妻を殺そうとしたことについて否定している。)
⑸ He enjoys living alone in the country. (彼は田舎で一人暮らしを楽しんでいる。)
⑹ He narrowly escaped being killed. (彼はなんとか殺されることを免れた。)
例文の各動詞について、「現在指向(対処する)」をテーマに解説します。
例文⑷の〔deny(否定する)〕は、現在置かれている立場を否定する行為です。
例文⑸の〔enjoy(楽しむ)〕は、現在置かれている状況を楽しむ行為です。
例文⑹の〔escape(免れる)〕は、現在置かれている立場を免れることを言い表します。
⑺ I have just finished cleaning. (ちょうど掃除を終えたところだ。)
⑻ He had no choice to give up smoking. (彼は喫煙をやめるほかなかった。)
⑼ Today it’s hard to imagine living without TV. (今日ではテレビのない生活は想像できない。)
例文の各動詞について、「現在指向(対処する)」をテーマに解説します。
例文⑺の〔finish(終える)〕は、現在まで行われていた行為を終えることを言い表します。
例文⑻の〔give up(あきらめる)〕は、現在まで続いていたことをあきらめることです。
例文⑼の〔imagine(想像する)〕は、現在の状況をもとにして何か想像をすることです。
⑽ I don’t mind lending you some money. (君にお金を貸すことが嫌ではない。)
⑾ Let’s postpone discussing the matter until some other day. (その件の議論は後日に延期しましょう。)
⑿ Woman who put off having a baby often make the best mothers. (子どもを持つことを先延ばしにする女性は最良の母親となることが多い。)
⒀ I couldn’t stop laughing. (笑いを止めることができなかった。)
例文の各動詞について、「現在指向(対処する)」をテーマに解説します。
例文⑽の〔mind(嫌がる)〕は、現在置かれている状況を嫌がる態度を表わします。
例文⑾の〔postpone(延期する)〕は、現在置かれている状況から延期という選択を行うことです。
例文⑿の〔put off(延期する)〕は、現在置かれている状況から延期という選択を行うことです。
例文⒀の〔stop(やめる)〕は、現在まで続いていたことをやめることです。
以上の例文を通して、動名詞は現在置かれている状況や状態をどう対処するか、またはどう感じるかを示すといった現在に目を向ける性質があることが感じられたかと思います。
次からは、to不定詞と動名詞の両方を目的語にするが、その表す意味が異なる動詞について説明します。
to不定詞と動名詞の両方を目的語にする動詞
to不定詞と動名詞の両方を目的語にする動詞に動詞〔try〕があります。
動詞〔try〕の目的語が to不定詞 動名詞 の場合
to不定詞が目的語になった場合は、未来的な性質が現われ、「~しようと試みる(~しようとする)」という和訳になります。
動名詞が目的語になった場合には、現在置かれた状況を考慮に入れつつ「試しに~してみる」という和訳になります。
早速、例文で確認してみましょう。
⑴ Every time I try to call him, I get a busy signal. (電話をしようとするといつも、話し中の合図を受け取る。)
⑵ I try to send an answer to an e-mail on the day I receive it. (私はメールを受けたその日に返信するようにしています。)
⑶ Try being nice to people around you. Then, they’ll like you. (試しに周りの人に親切にしなさい。そうすれば、周りの人があなたを気に入るでしょう。)
⑷ “This lid doesn’t close properly.” “Try turning it the other way around.” (「この蓋はぴったり閉まらないよ。」「試しに逆方向に回してみてごらん。」)
to不定詞と動名詞を目的語にする動詞には、他にも〔remember〕〔forget〕〔regret〕があります。
これらの動詞については、
to不定詞が目的語になった場合、これからすること(する予定だったこと)を表わし、
動名詞が目的語になった場合、すでにしたことを表わします。
動詞〔remember〕の目的語が to不定詞 動名詞 の場合
to不定詞が目的語になった〔remember + to不定詞〕は「~することを覚えておく」と訳します。
動名詞が目的語になった〔remember + 動名詞〕は「~したことを覚えている」と訳します。
例文で確認しましょう。
⑴ Remember to pack your passport in your hand luggage. (パスポートを手荷物の中に入れることを覚えておくように!)<目的語はto不定詞>
⑵ Please remember to mail this letter on the way. (通りがかりにこの手紙を出すのを覚えておいてください。) <目的語はto不定詞>
⑶ I remember being impressed with his work. (彼の仕事ぶりに感銘を受けたのを覚えている。) <目的語は動名詞>
⑷ I remember thinking how smart my teacher was. (私は先生ってなんて頭がいいんだろうと思っていたことを覚えている。) <目的語は動名詞>
動詞〔forget〕の目的語が to不定詞 動名詞 の場合
to不定詞が目的語になった〔forget + to不定詞〕は「~することを忘れる」と訳します。
動名詞が目的語になった〔forget + 動名詞〕は「~したことを忘れる」と訳します。
例文で確認しましょう。
⑴ Don’t forget to call me. (私に電話することを忘れないように。)
⑵ Don’t forget to close up the store when you leave. (出かける時には店の鍵を閉めるのを忘れないように。)
⑶ I will never forget seeing her. (彼女に会ったことは決して忘れません。)
⑷ I will never forget meeting you for the first time. (あなたに初めて会ったときのことは決して忘れません。)
動詞〔regret〕の目的語が to不定詞 動名詞 の場合
to不定詞が目的語になった〔regret + to不定詞〕は「~することを残念に思う」と訳します。
動名詞が目的語になった〔regret + 動名詞〕は「~したことを残念に思う(後悔する)」と訳します。
例文で確認しましょう。
⑴ I regret to say that I cannot come. (残念ですが、お伺いできません。)
⑵ I regret to inform you that our president has resigned. (残念ながら社長が辞任されたことをお知らせします。)
⑶ I regret saying so. (私はそういったことを後悔している。)
⑷ He regretted being idle in his youth. (彼は若い頃怠けていたことを後悔した。)
まとめ
to不定詞と動名詞が目的語になった場合の性質や違いについて解説しました。
学んだことを、おさらいしましょう。
「未来的・達成指向」という特徴を持ち、未だ達成されていない未達成の事柄が達成に向かって行くような未来的な性質を示す。
「現在的・対処指向」という特徴を持ち、現在置かれている状況や状態をどう対処するか、またはどう感じるかを表わす性質を示す。
・to不定詞が目的語になった場合は、未来的な性質が現われ、「~しようと試みる」という和訳になる。
・動名詞が目的語になった場合には、現在置かれた状況を考慮に入れつつ「試しに~してみる」という和訳になる。
・to不定詞が目的語になった場合、これからすること(する予定だったこと)を表わす。
・動名詞が目的語になった場合、すでにしたことを表わします。