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助動詞は表現者の気持ちや態度、認識、思考などを表わすのに用いられます。
したがって、確実に自分を表現したり、確実に相手の表現を受け止めたりするには助動詞の語感を身に付けることが非常に大切となります。
英語の助動詞には「can / could / may / might / must / will / would / shall / should / need / dare / have to / ought to / used to」等があります。
これらの助動詞全ての語感(使用場面)を見に付けることができれば、表現や受容の幅が各段に広がることは間違いないでしょう。
さて、今回は助動詞の「must」について詳しく解説を行いたいと思います。
「must」は「~しなければならない」という義務の用法のイメージが強いですが、その他にもいくつか大切な意味機能も持ちます。
それでは、助動詞「must」について学んでいきましょう。
助動詞「must」は8つのキーワードでほぼ完全な理解が可能です。
助動詞「must」の8つのキーワード
助動詞「must」の8つのキーワードは以下のとおりです。
1.義務の「must」
2.必要の「must」
3.確信の「must」
4.禁止の「must」
5.必然の「must」
6.命令の「must」
7.勧誘の「must」
8.意見の「must」
それでは、それぞれのキーワードについて掘り下げていきます。
1.義務の「must」
義務は助動詞「must」の最も代表的な用法です。和訳は「~しなければならない」となります。自分自身がある行為をする義務があると感じている場合や、他者に対してある行為をする義務があると押し付ける場合に義務の「must」が使われます。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ How much must I pay? (私はいくら払わなければなりませんか?)
⑵ I must get up earlier than usual tomorrow morning. (明日の朝はいつもより早く起きなければならない。)
⑶ You must get permission to park your car here. (ここに駐車するには許可を得なければならない。)
⑷ Mankind must put an end to war, or war will put an end to mankind. (人類は戦争に終止符を打たなければならない。そうでなければ、戦争が人類に終止符を打つことになる。)
例文⑴は、払わなければならない義務を「must」を使って表現しています。
例文⑵は、早く起きなければならない義務を「must」を使って表現しています。
例文⑶は、許可を得なければならない義務を「must」を使って表現しています。
例文⑷は、戦争に終止符を打たなければならない義務を「must」を使って表現しています。
2.必要の「must」
あることをする必要性がある場合に「must」が使われます。和訳は「~する必要がある」となります。義務の「must」と意味がかなり近いですが、必要の「must」は義務の「must」よりも義務感がやや小さく、必要性を重視しています。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ I must have the wall painted. (壁にペンキを塗ってもらう必要がある。)
⑵ That disease must be treated by a doctor. (その病気は医者に治療してもらう必要がある。)
⑶ We must have some scientific knowledge on the subject. (その問題についてある程度の科学的知識を有している必要がある。)
⑷ You must build up your strength after your sickness. (あなたは病後に体力を養う必要がある。)
例文⑴は、壁にペンキを塗ってもらう必要が「must」で表現されています。
例文⑵は、病気に関して、医者に治療してもらう必要が「must」で表現されています。
例文⑶は、科学的知識を備えている必要が「must」で表現されています。
例文⑷は、病後の体力増強の必要が「must」で表現されています。
3.確信の「must」
ある事柄に関して、確信を持って判断する際に「must」が使われます。和訳は「~に違いない」となります。表現者の判断に基づいているため、主観的な要素が強いです。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ I thought at first they must be students. (私は最初、彼らは学生に違いないと思った。)
⑵ You must have the wrong number. (電話番号をお間違え(に違いない)ですよ。)
⑶ He must be tired after his long fright. (彼は長時間の飛行で疲れているに違いない。)
⑷ You must know the answer since you are a high school student. (あなたは高校生なので答えを知っているに違いない。)
例文⑴は、「must」を用いて、学生に違いないと確信しています。
例文⑵は、「must」を用いて、電話番号を間違えているに違いないと確信しています。
例文⑶は、「must」を用いて、疲れているに違いないと確信しています。
例文⑷は、「must」を用いて、答えを知っているに違いないと確信しています。
4.禁止の「must」
ある行為を禁止する場合に助動詞「must」と副詞の「not」が一緒に使われます。和訳は「~してはいけない」となります。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ You must not furnish personal information to a third party. (第三者に個人情報を与えてはいけない。)
⑵ Unauthorized staff must not enter this area. (許可された職員以外この区域に入ってはいけない。)
⑶ Cars must not be parked here. (ここに車を停めてはいけない。)
⑷ You must not drive your car onto the sidewalk. (車を歩道に乗り入れてはいけない。)
例文⑴は、〔must + not〕の表現で、個人情報を第三者に与えることを禁止しています。
例文⑵は、〔must + not〕の表現で、許可された職員以外の立ち入りを禁止しています。
例文⑶は、〔must + not〕の表現で、車を停めることを禁止しています。
例文⑷は、〔must + not〕の表現で、車の歩道への乗り入れを禁止しています。
5.必然の「must」
ある物事が必ずある方向に進むというような必然性がある際に「must」が使われます。和訳は「必ず~になる」となります。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ All good things must come to an end. (どんな良いことも全ては必ず終わりを迎える。)
⑵ Every creature must get old. (すべての生き物は必ず老いる。)
例文⑴は、すべての事には終わりがあるという必然性が「must」を使って述べられています。
例文⑵は、生き物は必ず老化するという必然性が「must」を使って述べられています。
6.命令の「must」
他者に対して何か命令を行う場合に「must」が使われることがあります。和訳は「~しなさい」となります。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ It’s very cold, so you must cover yourself up well. (とても寒いから、ふとんをちゃんと掛けなさい。)
⑵ You must chew your food well. (食べ物をよく噛みなさい。)
⑶ You must economize on water. (水を節約しなさい。)
⑷ You must close pay attention to what your teachers says. (先生のおっしゃることをよく注意して聞きなさい。)
例文⑴は、「must」を用いて、ふとんをちゃんと掛けるように命令しています。
例文⑵は、「must」を用いて、食べ物をよく噛むように命令しています。
例文⑶は、「must」を用いて、水を節約するように命令しています。
例文⑷は、「must」を用いて、先生の発言を注意して聞くように命令しています。
7.勧誘の「must」
相手に何かを強く勧める場合に「must」が使われることがあります。和訳は「ぜひ~してください」となります。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ You must see that film. (ぜひその映画を観てください。)
⑵ You must come again sometime. (いつかまたぜひいらしてください)
⑶ You must eat this cake. (ぜひこのケーキを召し上がってみてください。)
⑷ You must come and see us when you come to San Francisco. (サンフランシスコに来られたら、ぜひ家にもいらしてください。)
例文⑴は、「must」を使って、映画を観ることを勧めています。
例文⑵は、「must」を使って、再訪を勧めています。
例文⑶は、「must」を使って、ケーキを食べるように勧めています。
例文⑷は、「must」を使って、訪問を勧めています。
8.意見の「must」
他者に対して何か意見する場合に「must」が使われることがあります。和訳は「~べきだ」となります。
早速例文で確認してみましょう。
⑴ We must act now. (今こそ行動すべきだ。)
⑵ You must obey the law. (君は法律に従うべきだ。)
⑶ You simply must read this book. (この本を絶対読むべきだ。)
例文⑴は、行動すべきという意見を「must」を用いて述べています。
例文⑵は、法律に従うべきという意見を「must」を用いて述べています。
例文⑶は、本を読むべきだという意見を「must」を用いて述べています。
過去の状況について断定する際や過去の出来事が現在の義務に繋がっている際、つまり「~したに違いない」「~していなければならない(主に受験資格を確認する表現で多用される)」と表現する場合は助動詞〔must〕の後に完了形を続けます。
すなわち〔must + have +動詞の過去分詞〕となります。
⑴ He must have made a mistake. (彼はミスをしてしまったに違いない。)
⑵ To study in a university, you must have graduated from a senior high school. (大学で勉強する為には、高等学校を卒業していなければならない。)
この〔must + have +動詞の過去分詞〕のカタチについて、学習者が抱く疑問があります。それは、〔must〕の後は過去形ではなく、なぜ完了形を使うかという疑問です。
この疑問について考察したいと思います。
文法上のルールから考えると、一般助動詞の後は原形が来なければなりません。つまり、動詞の過去形をそのまま助動詞〔must〕の後に置いてしまうと、「助動詞の後には原形が続く」というルールを違反してしまうことになります。したがって、過去形ではなく、助動詞の〔have〕と〔動詞の過去分詞〕を組み合わせた〔have + 過去分詞〕(=完了形)のカタチにして、助動詞〔have〕の原形を〔must〕の後に持ってくることで「助動詞の後には原形が続く」というルールに従ったと考えることができます。
また、時制の観点から考えると、過去の状況を思い返して「~したに違いない」「~していなければならない」と述べる際、過去の出来事の影響が現在にまで及んでいるため、「単に過去の事実を述べる性質を持つ過去形」よりも「過去の出来事が現在に繋がっているという性質を持つ完了形」を使う方が好ましいと考えることもできます。
考察は以上です。
ちなみに、「~に違いない」の反対の「~のはずがない」と表現する際は、助動詞〔can〕の否定の形である〔cannot(can’t)〕を用います。
⑴ This answer can't be right. (この答えは合っているはずがない。)
⑵ That store can't be so crowded. (あの店がそんなに混んでいるはずがない。)
また、「~しなければならない」の反対の「~する必要はない」と表現する際は、助動詞〔do〕と助動詞〔have to〕を用いて、それを否定の形にした〔do not have to〕を用います。
⑴ I don't have to take the exam. (私はその試験を受ける必要はない。)
⑵ You don't have to take me to the airport. (私を空港まで送ってくれる必要はないです。)
まとめ
それでは、学んだことをおさらいしましょう。
助動詞「must」には8つのキーワードに基づいた意味機能がありました。
1.義務の「must」 〔和訳〕~しなければならない
2.必要の「must」 〔和訳〕~する必要がある
3.確信の「must」 〔和訳〕~に違いない
4.禁止の「must」 〔和訳〕~してはいけない
5.必然の「must」 〔和訳〕必ず~になる
6.命令の「must」 〔和訳〕~しなさい
7.勧誘の「must」 〔和訳〕ぜひ~してください
8.意見の「must」 〔和訳〕~べきだ
以上で、助動詞「must」の語感がしっかり身に付けられたかと思います。