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関係代名詞はしばしば省略されることがあります。関係代名詞が文の中で省略されると、文章の解釈が一段と難しくなる場合が多く、やっかいです。
やっかいですが、関係代名詞の省略が行われる条件は限られているので、関係代名詞が省略される条件をしっかり把握し、文中で関係代名詞が省略されている際には必ずそれに気付けるように力をつけましょう!
そもそも我々の扱う日本語は主語を省略したり、お互いが分かっているだろうことは敢えて言いません。無意識ですが、ことばの省略を日常的に沢山行っているのです。つまり、我々はことばの省略のプロフェッショナルといえます。ことばの省略のプロなので、関係代名詞の省略についても、省略のルールさえ知っていれば、取り扱うのはきっと簡単です。自信を持って挑みましょう。
関係代名詞省略の条件
<前提となる知識>関係代名詞の省略には、5文型の理解が必要です。(後ほど解説があります。)
さて、名詞は、文の中で〔主語〕〔動詞の目的語〕〔前置詞の目的語〕〔補語〕の4つの内のいずれかの役割を果たします。
関係代名詞は代名詞であり、名詞と同じ性質を持ちますので、名詞と同じ4つ〔主語〕〔動詞の目的語〕〔前置詞の目的語〕〔補語〕のいずれかの役割を果たします。ところで、関係代名詞はある名詞(=先行詞)を説明する形容詞節をつくります。(節とは、主語と述語動詞を含む語のかたまりです。)その形容詞節の中で、先ほどの4つのいずれかの役割を果たします。
もし、関係代名詞についてよく分からない、形容詞節がよく分からないという方はこちらの記事を参考ください。
さて、関係代名詞が省略されるのは、形容詞節の中で関係代名詞が〔主語〕以外になる時、つまり、関係代名詞が〔動詞の目的語〕〔前置詞の目的語〕〔補語〕のいずれかになる場合、関係代名詞を省略することができるようになります。ちなみに、関係代名詞の省略は任意で行われ、つまり、省略してもしなくてもどちらでも良いです。絶対に省略しなければならないというわけではありません。
関係代名詞が形容詞節の中で〔動詞の目的語〕〔前置詞の目的語〕〔補語〕のいずれかになる場合。(関係代名詞が形容詞節の中で〔主語〕にならない場合。)
※関係代名詞は基本的に動詞の目的語になることができますが、例外として第4文型の間接目的語(IO)になることができません。
詳しくはこちら↓の記事で確認ください。
関係代名詞が形容詞節の中で〔主語〕になる次のような場合には、基本的に関係代名詞の省略は行われません。
Any student who wants to attend is welcome. (参加したい人なら誰でも歓迎です。)
それでは、関係代名詞が省略されるケースを例文で確認していきましょう。
関係代名詞が動詞の目的語になる場合
関係代名詞が動詞の目的語になる場合をみていきましょう。
The book which I bought yesterday was boring. (私が昨日買った本は退屈だった。)
まず始めに、関係代名詞〔which〕の中身を考えましょう。そもそも関係代名詞は代名詞として、名詞の繰り返しを避けるために存在しています。この例文の中では、関係代名詞〔which〕が〔the book〕という名詞(先行詞)の繰り返しを避けるために代わりとして用いられています。
したがって、関係代名詞の中身は〔the book〕になります。
さて、例文では、関係代名詞の〔which〕が形容詞節⦅カッコ⦆内で動詞〔bought〕の目的語になっています。関係代名詞が動詞の目的語になっているこのような場合には、関係代名詞の省略が可能です。関係代名詞〔which〕を省略すると、名詞〔The book〕の後に、〔I bought〕という主語(名詞)と動詞が続くことになります。そして、形容詞節の中に注目すると、動詞の目的語という役割を担っていた関係代名詞が省略されたため、形容詞節の中は動詞の目的語が足りない不完全な文になります。
以上をもとに関係代名詞の省略を見極める方法について考えてみましょう。まず、名詞のすぐ直後に主語と動詞が続いている場合、関係代名詞の省略が疑われます。そして、この疑いを確信に変えるためには次に形容詞節の中に注目します。もし形容詞節の中が動詞の目的語が足りない不完全な文となっていた場合は、もともと動詞の目的語の役割を担っていた関係代名詞が省略されていることが確実だといえるでしょう。
動詞の目的語となる関係代名詞の省略はこのようにして突き止めましょう!
関係代名詞が前置詞の目的語になる場合
関係代名詞が前置詞の目的語になる場合をみていきましょう。
The garage which I keep my car in is over there. (私が車を停めている車庫はあちらです。)
まず始めに、関係代名詞〔which〕の中身を考えましょう。そもそも関係代名詞は代名詞として、名詞の繰り返しを避けるために存在しています。この例文の中では、関係代名詞〔which〕が〔the garage〕という名詞(先行詞)の繰り返しを避けるために代わりとして用いられています。
したがって、関係代名詞の中身は〔the garage〕になります。
さて、例文では、関係代名詞の〔which〕が形容詞節内⦅カッコ⦆内で前置詞〔in〕の目的語になっています。関係代名詞が前置詞の目的語になっているこのような場合には、関係代名詞の省略が可能です。関係代名詞〔which〕を省略すると、名詞〔The garage〕の後に、〔I keep〕という主語(名詞)と動詞が続くことになります。そして、形容詞節の中に注目すると、前置詞の目的語という役割を担っていた関係代名詞が省略されたため、形容詞節の中は前置詞の目的語が足りない不完全な文になります。
以上をもとに関係代名詞の省略を見極める方法について考えてみましょう。まず、名詞のすぐ直後に主語と動詞が続いている場合、関係代名詞の省略が疑われます。そして、この疑いを確信に変えるためには次に形容詞節の中に注目します。もし形容詞節の中が前置詞の目的語が足りない不完全な文となっていた場合は、もともと前置詞の目的語の役割を担っていた関係代名詞が省略されていることが確実だといえるでしょう。
前置詞の目的語となる関係代名詞の省略はこのようにして突き止めましょう!
関係代名詞が補語になる場合
関係代名詞が補語になる場合をみていきましょう。
He is not a good teacher that he used to be. (彼はかつてのような良い先生ではない。)
まず始めに、関係代名詞〔that〕の中身を考えましょう。そもそも関係代名詞は代名詞として、名詞の繰り返しを避けるために存在しています。この例文の中では、関係代名詞〔that〕が〔teacher〕という名詞(先行詞)の繰り返しを避けるために代わりとして用いられています。
したがって、関係代名詞の中身は〔teacher〕になります。
さて、例文では、関係代名詞の〔that〕が形容詞節⦅カッコ⦆内で補語になっています。関係代名詞が補語になっているこのような場合には、関係代名詞の省略が可能です。関係代名詞〔that〕を省略すると、名詞〔teacher〕の後に、〔he (used to) be〕という主語と動詞が続くことになります。そして、形容詞節の中に注目すると、補語の役割を担っていた関係代名詞が省略されたため、形容詞節の中は補語が足りない不完全な文になります。
以上をもとに関係代名詞の省略を見極める方法について考えてみましょう。まず、名詞のすぐ直後に主語と動詞が続いている場合、関係代名詞の省略が疑われます。そして、この疑いを確信に変えるためには次に形容詞節の中に注目します。もし形容詞節の中が補語が足りない不完全な文となっていた場合は、もともと補語の役割を担っていた関係代名詞が省略されていることが確実だといえるでしょう。
補語となる関係代名詞の省略はこのようにして突き止めましょう!
以上で、関係代名詞の省略について理解できましたでしょうか。
関係代名詞が省略される条件のおさらい
関係代名詞が形容詞節の中で〔動詞の目的語〕〔前置詞の目的語〕〔補語〕のいずれかになる場合。(関係代名詞が形容詞節の中で〔主語〕にならない場合。)
関係代名詞省略の突き止め方
【1】名詞の直後に主語(名詞)と動詞が続いている場合に関係代名詞の省略が疑われる
【2】形容詞節の中が不完全な文(動詞の目的語、前置詞の目的語、補語のどれか1つが足りない文)であれば、関係代名詞の省略は確実である
それでは、関係代名詞が省略された例文を実際にいくつか確認してみましょう。
関係代名詞の省略された文
The room we slept in was as quiet as a grave. (我々が寝た部屋は墓場のように静かだった。)
関係代名詞が省略されています。さて、どの部分でしょう。
【解説】例文では名詞〔The room〕の直後に〔we slept〕という主語(名詞)と動詞が続いていて、関係代名詞の省略が疑われます。そして、その先に進むと前置詞〔in〕の目的語が足りないことが分かります。前置詞の目的語は名詞でなければならないはずなのに、前置詞〔in〕の後には動詞の〔was〕が続いています。したがって、関係代名詞の省略は確実です。前置詞の目的語になる関係代名詞〔which〕が形容詞節⦅which we slept in⦆を作った後、関係代名詞の〔which〕が省略されたと考えられます。省略された関係代名詞を戻すと The room ⦅which we slept in⦆ was as quiet as a grave. となります。形容詞節⦅カッコ⦆内で関係代名詞〔which〕は前置詞〔in〕の目的語になっていて、省略されていました。ちなみに、例文では先行詞の〔the room(=部屋)〕を⦅which we slept in(=我々が寝た)⦆という形容詞節が修飾(説明)しています。
This is the best hotel I know. (これは、私が知っている一番いいホテルです。)
関係代名詞が省略されています。さて、どの部分でしょう。
【解説】 例文では名詞〔hotel〕の直後に〔I know〕という主語(名詞)と動詞が続いていて、関係代名詞の省略が疑われます。そして、その先に進むと動詞〔know〕の目的語が足りません。 動詞〔know〕の 後はピリオドで終わっています。したがって、関係代名詞の省略は確実です。動詞の目的語になる関係代名詞〔which〕が形容詞節⦅which I know⦆を作った後、関係代名詞の〔which〕が省略されたと考えられます。省略された関係代名詞を戻すと This is the best hotel ⦅which I know⦆. となります。 形容詞節⦅カッコ⦆内で関係代名詞〔which〕は動詞〔know〕の目的語になっていて、省略されていました。ちなみに、例文では先行詞の〔hotel(=ホテル)〕を⦅which I know(=私が知っている)⦆という形容詞節が修飾(説明)しています。
I’m not the fool you thought me. (私は、君が思っていたような愚か者ではない。)
関係代名詞が省略されています。さて、どの部分でしょう。
【解説】 例文では名詞〔the fool〕の直後に〔you thought〕という主語(名詞)と動詞が続いていて、関係代名詞の省略が疑われます。そして、その先に進むと〔you thought me〕の部分が第5文型(SVOC)と考えられ、そうすると補語(C)が足りません。したがって、関係代名詞の省略は確実です。第5文型の補語になる関係代名詞〔that〕が形容詞節⦅that you thought me⦆を作った後、関係代名詞の〔that〕が省略されたと考えられます。省略された関係代名詞を戻すと I’m not the fool ⦅that you thought me⦆. となります。形容詞節⦅カッコ⦆内で関係代名詞〔that〕は第5文型の補語になっていて、省略されていました。ちなみに、例文では先行詞の〔fool(=愚か者)〕を⦅that you thought me(=君が私に対して思っていた)⦆という形容詞節が修飾(説明)しています。
It is inconceivable that all the problems the earth is faced with will be solved soon. (地球が直面しているすべての問題がすぐに解決されるということは考えられない。)
関係代名詞が省略されています。さて、どの部分でしょう。
【解説】 例文では名詞〔the problem〕の直後に〔the earth is faced〕という主語(名詞)と動詞が続いていて、関係代名詞の省略が疑われます。そして、その先に進むと前置詞〔with〕の目的語が足りません。前置詞の目的語は名詞でなければならないはずなのに、前置詞〔with〕の後には助動詞の〔will〕が続いています。 したがって、関係代名詞の省略は確実です。前置詞の目的語になる関係代名詞〔which〕が形容詞節⦅which the earth is faced with⦆を作った後、関係代名詞の〔which〕が省略されたと考えられます。省略された関係代名詞を戻すと It is inconceivable 〚that all the problems ⦅which the earth is faced with⦆ will be solved soon〛. となります。形容詞節⦅カッコ⦆内で関係代名詞〔which〕は前置詞〔with〕の目的語になっていて、省略されていました。ちなみに、例文では先行詞の〔problems(=問題)〕を⦅which the earth is faced with(=地球が直面している)⦆という形容詞節が修飾(説明)しています。
After decades of strife and invasion, Afghanistan is not the country it used to be. (何十年もの紛争や侵略を経て、アフガニスタンはかつてのような国でなくなっている。)
関係代名詞が省略されています。さて、どの部分でしょう。
【解説】 例文では名詞〔the country〕の直後に〔it used to be〕という主語(名詞)と動詞が続いていて、関係代名詞の省略が疑われます。そして、その先に進むと〔it used to be〕の部分が第2文型(SVC)と考えられ、そうすると補語(C)が足りません。したがって、関係代名詞の省略は確実です。第2文型の補語になる関係代名詞〔that〕が形容詞節⦅that it used to be⦆を作った後、関係代名詞の〔that〕が省略されたと考えられます。省略された関係代名詞を戻すと After decades of strife and invasion, Afghanistan is not the country ⦅that it used to be⦆. となります。 形容詞節⦅カッコ⦆内で関係代名詞〔that〕は第2文型の補語になっていて、省略されていました。ちなみに、例文では先行詞の〔country(=国)〕を⦅that it used to be(=かつてのような)⦆という形容詞節が修飾(説明)しています。
さて、最後に関係代名詞の省略を覚えるための架空の物語を考えましたので、是非一読ください。
関係代名詞の省略に関する架空の物語
「関係代名詞」が世の中に誕生して間もない頃の話である。
その当時、「関係代名詞は節の先頭でなければならない」というルールは存在していなかったが、ある時、関係代名詞の作る形容詞節がどこから始まるのか分かりやすくするため、「関係代名詞を節の先頭に置く」という共通のルールが導入された。
関係代名詞が節の中で〔主語〕になる場合は、自動的に関係代名詞が節の先頭に来るので、これまでと変わわりません。
しかし、 関係代名詞が節の中で〔動詞の目的語〕〔前置詞の目的語〕〔補語〕になる場合は 意識して関係代名詞を節の先頭に持ってこなければなりません。
「関係代名詞を節の先頭に置く」というルールの導入当初、人々はまだそれに慣れていなかったため、頻繁に関係代名詞を節の先頭に置き忘れた。
関係代名詞を節の先頭に置き忘れて、後でそのことに気付いた場合、消しゴムでゴシゴシして節の先頭から文字を書き直す必要があった。
はっきりいって、この作業は大変です!! 人々は書いては消して、書き直しての繰り返しにより、行政、銀行、企業、学校と至るところで作業の非効率が発生し、国家が衰退し始めました。
この事態を深刻に受け止め、人々はついに新しい文法ルールを導入することを決めます。
<関係代名詞の省略>
「関係代名詞が節の中で〔動詞の目的語〕〔前置詞の目的語〕〔補語〕になっている場合は、省略しても良いことにしよう」
人々は「関係代名詞の省略」という新しい文法ルールの導入によって、関係詞を節の先頭に置き忘れても書き直しを行わずに済むようになりました。関係代名詞を節の先頭に置き忘れても、それを省略したことにして書かなければ良いのです。
この新しい文法ルールの導入により、国家は輝きを取り戻し、次なる発展へ向けて新たな出発を迎えることができるようになりましたとさ。
めでたしめでたし。